◆第6回(環境変化に応じた組織IQの見直し)
今回は最新の組織IQの定義についてご説明します。近年の環境変化に応じて、これまで測定していた要素を見直す必要が生じているためです。
組織IQの5要素それぞれに「狙い」があり、組織IQの強化を進める各企業では各種の「対策」を進めています。一方で、各取り組みにはそれぞれに課題が生じます。従来からみられる顕著なものとして、『内部知識流通』に対する「全体最適志向の欠落」と、『効果的な意思決定機構』に対する「部門横断で判断が必要となる場合のメカニズムの欠如」です。これらの課題に対して行われる対応はまさに組織風土改革や組織改革です。
他方で『組織フォーカス』と『継続的革新』に対応する課題は大きな環境変化もあり、この前提から再考する必要が生じています(下の図をご参照)。
具体的に従来の『組織フォーカス』では、「戦力分散を回避するための戦力の集中」が狙いでした。しかし、昨今はビジネスサイクルが短期化しており、VUCAと言われる通り先を見通すことが難しくなっています。このため将来計画を精緻化し、そこに戦力を集中投下することは非現実的になってきています。また、従来の『継続的革新』では、「日々の業務改善による作業の効率化」が狙いでした。しかし、あらゆるものがコモディティ化しつつある現状では生産性向上による戦い方だけでは限界が生じています。より本質的には世界中で生じているDXの流れもあり、企業自身に根本的なビジネスモデル変革が求められているためです。
この組織IQの2要素については、その「狙い」を再整理して測定するようにしています。『組織フォーカス』については、弾力的マネジメント能力です。「長期的な計画の精度を高めるよりも、むしろライトな計画に基づき、トライアル&エラーを行いながら、軌道修正していく能力」と再定義しました。また『継続的革新』については、新事業創出能力です。「外部環境の変化や競合(ディスラプター)の出現に備えて、次世代ビジネスを継続的に創出・育成していく能力」と再定義しました(下の図をご参照)。
補足すると『組織フォーカス』は、「マネジメント・スタイル」と「新たなマネジメント機能」に関する状況を把握する指標にしています。前者(マネジメント・スタイル)は「減点主義を見直し、まずやらせて学ばせつつリスクコントロールするスタイルへの移行状況」を、後者(新たなマネジメント機能)は特にトップマネジメントによる「ポートフォリオ型マネジメント機能の導入状況」(事業ピボットの仕組み)を測定するものです。
また『継続的革新』は、「インキュベーション機能」と「CX(Corporate Transformation)機能」を把握する指標にしています。前者(インキュベーション機能)は部門横断、CVCを含めたスタートアップとの連携による「『知の探索』機能の強化状況」を、後者(CX機能)は企業自らによる「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善する仕組みや機能」を測定するものです。加えてこの測定の際に、「ダイバーシティの推進状況」も加味するようにしています(下の図をご参照)。
このように環境の変化を受けて、組織能力を測定する指標自体も見直しながら進めています。上述の2要素に見られる大幅な変動ではないものの、他の要素についても測定ポイントを調整しながら進めています。お客様が対象とされる市場特性や競争環境、自社資源の特性などにより測定ポイントの強弱は異なりますが、ご参考までに最新の測定ポイント(汎用例)を以下に掲示させていただきます。