◆第54回(プロジェクト型組織)

 今回は私の好きなマギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授の書籍を引用しつつ、これからの組織形態として着目度の高いプロジェクト型組織について考えてみたいと思います。

 以前、このブログで発信させて頂いた通り、私はこれからの組織には「トライ&ラーン」(まず試してみて、そこからの学びをアクションにいかす)というアプローチが有効だと考えています。背景にはVUCAの時代と言われる通り、いくら計画を立てても予測しづらく複雑で不透明な時代だという状況認識があるためです。予測が難しいなら、行動にも重点を置いて、そこでの個人の学びをいかす組織づくりが望ましい。この組織形態として最もフィットするのがプロジェクト型組織だと考えています。

 本題に入る前に、ミンツバーグ教授が組織を考察するために用いている4つの分類(4つの組織形態)について、軽く触れたいと思います。

<図>4つの組織形態

出典:The Structuring of Organizations: A Synthesis of the Research

 図の通り、パーソナル型・プログラム型・プロフェッショナル型・プロジェクト型の4分類です。スタートアップによく見られるパーソナル型、日本の大企業に多いプログラム型は理解しやすいと思います。また、プロフェッショナル型はプロスポーツの世界やシンクタンクなどが想起されます。一方で、プロジェクト型は会社組織というより、会社内や会社横断で組織をつくる場合に採用されるイメージでしょうか。

 まさに特徴に記載がある通り、他の組織形態と比べれば新事業立ち上げや新サービス企画などに向く「アドホクラシー(臨機応変)」な組織体制です。しかし、日本でのイメージは期限や予算、リソースに制約が強いイメージも強く、アドホクラシー感がないかもしれません・・・。但し、他の3形態と比べると、柔軟性の高い民主的なチームを組成し、新たなことを生み出すことに向いている組織形態と言えます。

 また、パーソナル型がカリスマの打ち出すビジョンによって動くものだとすれば、大企業の基本形となるプログラム型は会社としてのミッションやバリューがエンジンになります。逆にプロフェッショナル型は個人にとっても組織にとってもスキルの熟達がいいエンジンになりそうです。

 一方でプロジェクト型は、やや短期的な目的達成をゴールとする組織です。このため、その目的自体が参画メンバーにとっての重要な動機になります。

 ここからは、この4つ形態を相対的に比較する視点ではなく、新たな事業やサービスの企画・推進に必要とされる組織としての「プロジェクト型」について考えたいと思います。

 このプロジェクト型組織の強みはイノベーションなどの創出に向いていて、アプローチなども(一定範囲内であれば)柔軟に取り組むことができる点です。一方で(特に大企業に見られるプログラム型組織と比べると)効率性が低い。各々が保有しているスキルが異なり、ビジネス慣習も、積んできた経験も異なる場合が多いためです。逆にそのようなメンバーの“組み合わせ”が必要だからこそ組成されるとも言えます。

 このため、ハイコンテクストな(正確かつ精緻な言語化による)コミュニケーションが求められます。新たな挑戦を志向するための組織というリスクの高い取り組みを担う点に加えて、スキルや経験の違うメンバーによる難易度の高いチーム組成となるためです。

 だからこそ、このプロジェクト型組織には、予め「学習モデル」を整備し、相互の学びを学習し合うメカニズムを機能させることが有効だと考えています。

 シューペンターの定義で言うところの「イノベーションとは知と知の結合」です。新たな知を分離・分散させず、統合するためのメカニズムが必須です。スキルや経験の違うメンバーによる難易度の高いチーム組成が有効であるからこそ、そうしたメンバー間で言語化しにくい曖昧な感覚も含めて議論し、相互に学びながら気づきを得ていくことが有効。プロジェクト型組織は知の結合・融合による新たな挑戦を志向する組織であるため、なおさら意識的に設計し、機能させる意味合いが大きい。そう考えています。

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