◆第2回(なぜ組織投資が重要と考えているのか?)
エンジニアとしてシステム開発を行っていた頃、業務を省力化・自動化する道具であるITへの投資を、 より労働生産性の向上につなげられないか、という漠然とした問題意識をもっていました。近年、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が広く叫ばれる状況となり、この点はなお更、その重要性が高まっていると感じています。
IT投資と効果創出の因果関係を解明し、その効果創出の要因を特定するとともに、その強化に向けた有効な示唆を提示できないだろうか。このような問にずっと自問してきました。
いろいろと調査を進めつつ、こうした問題意識に対する先人の研究を学んでいきました。大きくは、①制度・プロセスアプローチ、②ステージアプローチ、③コンテクストアプローチと3つのアプローチがあり、昨今は③のコンテクストアプローチに依拠した研究が欧米で活発です。私はその中で、IT投資の効果創出には「組織能力」が強く影響しているとして、その組織能力を「組織IQ」というフレームワークを用いて測定し、その強化を進めていくアプローチに着目しました。
これまでの研究で、組織能力(組織IQ)の高い企業は IT 投資の効果が高いのに対して、組織能力(組織IQ)の低い企業は IT 投資の効果が低いことが定量的に検証されています。自ら実際に日本企業200社の調査を行い、理論通りの結果となることの検証も行いました(業界別・企業規模別での検証も同様の結果を確認)。
このような理由(理論と検証結果)から、私はIT投資と並行して、その成果を高めるために、適切な「組織投資」を行うことが重要なポイントだと考えています。