◆第44回(自己探求の壁)

人的資本経営を推進していく取り組みの1つにエンゲージマネジメントがあります。エンゲージメントとは簡単に言えば、「会社への貢献意欲」を指します。この取り組みを本格化する企業が増えています。

エンゲージメントを向上することによって生産性が大きく改善されることを裏付ける検証レポートが増えているのに対して、日本企業は(他国と比べて)エンゲージメントが低い傾向を指摘されている背景があるためだと認識しています。

弊社では、このエンゲージメントの継続的な測定・蓄積を支援するサービスをご提供しています。まずは可視化し、定量的に把握するためのものです。但し、計測はあくまで起点にすぎず、分析結果に基づく課題の認識とその対策が重要です。

このエンゲージメント向上施策は企業によってさまざまなものがありますが、特に重要なものの1つに仕事の「自分事化」があります。ここでは会社のパーパス個人のキャリア設計にブレークし整合させることで、継続的にエンゲージメントを高める一連の取り組みを指しています。

そしてこの切り口は従来からよく喧伝されているパーパス経営そのものと言えますが、この取り組みが形骸化しているケースが散見されます。パーパスを定義し、社内に浸透させる。ここを形だけ取り繕っているケースです。

パーパス経営の本質は「動機付け要因の転換」であるため、個人のキャリアとの整合性を見出し、定期的に動機づけていく部分こそが重要です(以下の図ご参照)。

<図>

動機付けの要因が、従来の「お金と昇進」から「熱中と成長」に大きく舵を切り替える取り組みであるためです。ここはとても大きなインパクトがあり、従来の考え方や制度・ルールを見直す必要があります。

基本的に物不足に悩む時代が終わり、社会が一定レベルまで成熟してきた背景や、マズローの5段階欲求にある通り自分らしく生きていくことを皆が望む時代に入ったことによる影響だと思います。またWell-Beingを考えると、いい取り組みだと思います。

この新たな動機付け要因(熱中と成長)によってエンゲージメントを向上することで、人と組織を活性化し、会社の競争力を強化する。結果として、会社の継続性(サステナビリティ)を高める。そのための一連の取組みとして推進することが求められます。

ただ一足飛びには進められないため、まずは会社のパーパスを明確化した上で発信し、それを事業や部門単位に適切な言葉に置き換えながら浸透させていく。その上で一人ひとりの目的(キャリアプラン)と整合させるというステップが望まれます(下図ご参照)。

<図>

しかし、この最後の「自己探求とパーパスの統合」に壁があることが明らかになりつつあります。それは、パーパスをブレークして解像度を上げていく部分と並行して求められる、「自分は何をしたいのか」、「どのようなキャリアを形成したいのか」という“自己探求”の部分です。

実際に、人的資本の取組みの1つである人材育成方針に「自立的キャリア形成」を記載している企業は約40% (出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に上ります。一方で、そうした自律的・主体的なキャリア形成にストレスや息苦しさを感じる層が6割超に上るようです(下図ご参照)。

<図>

一人ひとりの意識の転換が求められています。就職ではなく就社と揶揄されたように「会社がキャリア形成を考えてくれる」時代は終わり、「自分でキャリア形成を考える」時代という意識への転換です。

一方で特に40-50代にとっては、従来の慣習とのGapもあり「突然言われても…」という意見があがります。また教育の側面からみても、自らが歩む道を考え選択して歩んでいくという動機付けの部分は弱かったのだと思います。極論すると吉田松陰の元から多くの傑物が出たように、自らの志を見出し追求に向かわせるような教育です。

こうした状況にどう対応していくべきなのか。何が有効なのか。弊社でも模索しています。

そうした中、弊社で最近取り入れ始めたものが2つあります。1つが(ポジティブ)心理学の父であるドン・クリフトン氏が考案した『クリフトン・ストレングス』。もう1つが心理学者のダグラス・ホール氏が提唱した『プロティアン・キャリア』です。前者について、簡単にご説明します。

クリフトン・ストレングスは、企業における「強み革命」を推奨するものであり、人や組織は弱点ではなく強みに目を向け、それを伸ばすことによって、個人や組織の能力を高めていこうという考え方に基づくものです。

前提として「才能」、「知識」、「技術」を明確に分けて捉えます。

その上で、才能こそが強みの源泉になるという考え方をとります。診断によって34個の資質パターンから5つの強み(才能)を特定し、それを活用する術を身につけていくことを勧めるものです。診断結果は、想定通りという方もいれば、想定外の才能に気づく方もいます。

ここでの本題は「自己探求」であるため、直接的な答えを導くメカニズムではありませんが、自らのキャリアを考える際に、この才能を本人が自覚し、それを活かしたプランを考えていくことはとても有効と言えます。組織としても個々人の才能を認識し、それを生かしたマネージメントを行うことで、組織としての生産性も高まります。チームを組成する際にも参考になるものです。

孫氏の兵法にある、「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」の通り、まずは自分を知ることが大切だと思います。自分の強み(才能)を知り、それを起点に自分をいかす、自分がいきる道を模索していく。とても有効なアプローチだと考えています。

◆第44回(自己探求の壁)”へ1件のコメント

  1. 代表者様

    株式会社ライトアップの嶋田と申します。

    HPを拝見しご連絡いたしました。

    弊社に寄せられる相談の中で、
    我々では解決できない経営課題をお持ちの方がおりまして、
    御社の得意領域や顧客業種等簡単に教えていただきたいと思っております。

    つきまして、お時間ある際に電話で数分お話しできればと思っております。

    以下、当社の会社概要になります。

    会社概要: https://www.writeup.jp/
    ※東証グロース市場上場・IT化支援・社員数約150名

    お電話可能な候補日程を、「●日、●時に電話希望(電話番号)」などと
    簡単で結構ですので下記アドレスに教えて頂ければ幸いです。

    ◆連絡先
     メールアドレス:alliance_cloud_mail@writeup.co.jp

    もしくは下記リンクよりお電話可能な日時をご予約ください。
    https://meetings.hubspot.com/ryouma_takahashi/mtg

    宜しくお願い致します。

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